グリネルの4年生

お久しぶりです、とぅるんです。久しく投稿をサボっていました、すみません…

4年生になって、新しく見えてきたグリネルのいいところや悪いところを紹介しようと思います。

MAP*を通して研究できてよかった

*MAPとはMentored Advanced Projectの事で、夏の間お金と単位をもらって教授と1対1で研究に取り組むことができるプログラムです

グリネルには大学院がなく、教授も研究より授業に重点を置いているのが特徴です。そのため、日本の大学によくある研究室に所属する、という概念は存在せず、卒論も必須ではないので、4年間全く研究をせずに卒業するということも可能です。理系専攻で大学院の進学を考えている人にとっては、これは大きなデメリットになります。というのも、研究が常に行われていないので、低学年のうちから研究室で経験を積んで、上級生になったらプロジェクトの中心に立って成果を残す(論文を出す、学会に出る、など)、ということが既定路線にならないからです。大学院ではこれらの実績が特に評価されるため、特に理系専攻の人は1年生のうちから自ら主体的に計画を練るべきです。

私の例で言うと、1年生の夏には日本の研究機関でインターンを、2年生からはTeaching AssistantやResearch Assistantの仕事で教授と関わりを持つようにしました。大学院出願には3人の教授から推薦状を書いてもらう必要があるので、強い推薦状をもらうには低学年から意識することが大事になります。

2年生の夏にはノースウェスタン大学の機械工学部で研究のインターンを、3年生の夏にはグリネルで宇宙物理の研究を行い、自分がどの分野に興味があり向いているかを試行錯誤しながら、研究経験を積むことができました。グリネルでの夏の研究は先学期に続いて今学期も続けており、今年の1月にはAASという宇宙物理/天文学の学会で成果を発表することができました。これについては以前な゛さんが前年の会議を記事にしているので参照して見てください。

🪐Conferenceしてきた🪐
ご無沙汰しております!な ゙です!!! そしてあけましておめでとうございます🎍今年も卒業までのわずかな時間、バ...

グリネルでの研究でよかったところは、

  1. 教授と親しくなれたこと
  2. プロジェクトを1人でリードする経験ができたこと
  3. 一夏だけでなく、一年を通してできたこと
  4. 学会で一人で発表する機会が持てたこと
  5. 質問をしやすい・学びやすい環境でできたこと

です。特に2は大きいと思っていて、大きい大学では学部レベルでなかなかプロジェクトのリードを取れる機会はありません。ましてやプロジェクトが1人でできる機会など、なかなかないのではないでしょうか?

グリネルで悪かったことは、

  1. 研究を継続的にやっている教授が少ない
  2. 自分の興味のある分野の教授がいない可能性がある
  3. 研究に割かれているお金が少ない
  4. お金が少ないので設備が良くない
  5. 卒業までに論文を出せるレベルに研究が進むとは限らない

などでしょうか。教授は様々な理由で研究プロジェクトを始めたり辞めたりします。自分が低学年の頃は生徒を受け付けている教授がいなかったので、3年生になるまで大学内で研究に関われることができませんでした。そのため、僕が卒業するまでの短期間で、論文を出すところまで行き着けませんでした(引き継いでくれる後輩に期待です)。学科によっても研究へのお金の出され方はまちまちなようで、教授が独自に奨学金などを持っている場合は生徒を受け付けますが、その限られたポジションを勝ち取るのは、学部生しかいないといえど難しそうに思えます(自分はそういった意味ではラッキーでした)。

様々な科目を勉強できてよかった

グリネルのいいところはオープンカリキュラムにあると思います。オープンカリキュラムとは、決められた授業だけを受けるのではなく、自分の専攻に限らず好きな授業を履修することができるシステムです。4年生になって物理の必須科目も大方取り終えたので、今年一年は、将来学ぶ機会が少ないであろう文系の科目を多くとっています。その中でも哲学は特に興味深くて、先学期のPhilosophy of Colonialism(植民地制度の哲学)や今学期とっているPhilosophy of Mind(心の哲学)は、議論を通して哲学の奥深さを学ぶことができました。自分がもし大きい大学や日本の大学に進学していたならおそらく取らなかったと思うので、物理以外の科目の魅力を知れてよかったなと思っています。

グリネルの最大の魅力は教授と生徒にあると思っていて、やはり様々な分野を勉強するには非常に最適な環境だと思います。自分が将来つきたい仕事や必要なスキルに関連する科目だけでなく、なんとなく気になっていた科目を気軽に取れて、しかも授業もハイレベルで面白いのでよかったと思います。

この記事を見られている方で、将来に関係しない授業を取って何の意味があるんだ、などと思っている人もいるかも知れません。自分も高校時代、将来のプランが明確にあって、それに必要な専攻は(宇宙工学)、取るべき授業は、と考えていました。

当時の自分に言えるとしたら、まず宇宙工学だけが宇宙産業に関わる専攻じゃないよ、ということ、そして、大学という場所は将来の仕事のために行く場所では必ずしもないよ、ということです。高校の校長先生が、大学という場所は高校と違って自らが行きたいと思って行く場所であり、学びにおいて教授と生徒は対等である、とおっしゃっていました。大学という場所は多くの人にとって就職のための場所だと認識されていることが多いですが、本来は行く必要のない場所です。自分は受験を何度も繰り返してきたので、ある種当たり前のように大学進学を決めていましたが、改めて今考えてみると、就職のために必ずしも授業を全て決める必要もないのでは、と思うようになりました。もちろん大学院進学には大学のネームバリューや専攻、GPA、研究経験、受けた授業が大事です。しかし、だからと言って全て就職に関係ある科目しか取らないというのもつまらないように思います。自分の話に置き換えるならば、ただプログラミングが得意な人間より、人とコミュニケーションが取れて自分の価値観を持って働く人間になりたいということです。

グリネルの授業で悪いところは、学べる分野が非常に限られていることだと思います。教える先生の専門も限られているので、取りたい授業が必ずしも取れるとは限りません。また教授も頻繁にいなくなったりするので、毎年この授業が開かれるとは限らないのも難点です。教授には教授と助教授という違いがありますが、教授の方は研究をもうすでに辞めている人も多いし、新しい授業を作らない人も多いです。これと違って助教授や新しく入ってきた教授は研究に生徒を活発に募集していて、また新しい授業を開く人が多い傾向があります。この新しい授業は生徒のニーズに基づいて開かれることもあれば、そうでないこともあります。何を言いたいかというと、もちろん学科によって新しい授業の頻度も異なりますが、必ずしも自分の取りたい授業がグリネルで開かれるわけではないということです。小さい大学では、しょうがないことなのかも知れません。

環境、気候を考えるべきだった

高校時代最も考えていなかったと思うのが、大学の置かれる環境や気候の大事さです。アメリカに住んだことある人ならお分かりだと思いますが、アメリカ内でも地域や州によって全く気候が違うことがよくあります。グリネルの置かれるアイオワ州、中西部では冬がほぼ4月まで続きますし、春・秋なんて体感1-2週間ほどしか続きません。アイオワはエンターテインメントが何もなくて、田舎の割には山や川もないので非常につまらない場所です。個人的にはもう少し周りに何かあると4年間楽しかったのにな、と思うところです。もちろん、4年間通勤ラッシュから逃れて悠々自適?に過ごせたのは感謝すべきかも知れません。

まとめ

こんなところでしょうか。4年生にもなると大学の不満しか出てこなくなります。もしグリネルを考えている受験生でこの記事を見てグリネルを受けるのをやめようかと思ってしまったらごめんなさい。リベラルアーツ大学としては、ある程度レベルも高くて留学生に寛容で奨学金も多く出してくれる、いい大学だと思います。授業の質も高いですし、進学・就職実績も非常にいいので、ぜひ考えてみてください。何か質問があればコンタクト欄からご連絡お待ちしております。

とぅるん