4年前の自分に伝えたい10つの事

真夜中に自分の写真がパソコンの画面に写り名前が呼ばれて私のグリネル での4年間は幕を閉じた。一年生の頃から憧れていた芝生のステージの上で家族や友人に囲まれながら祝う卒業とは全く形が違う卒業式だった。しかも学生生活を終えたその瞬間はオンキャンパスではなく、地球の反対側の実家のベッドの上だった。

それからの2ケ月間、私は卒業したという実感があまり湧かなかった。自分が描いていた理想とは程遠い学生生活の終わり方、いきなりすぎた友人や教授達との別れ、某ウイルスへの恐怖感、そして人種差別を訴える騒動が世界各地で起こっている中、この4年間達成した事を素直に喜べなかった。比較的安全な場所にいるありがたみ、家族がいるホッとする気持ち、でも理想の形で学生をやりきれなかった不完全さ、「普通」に卒業できた人達への嫉み、自由に外出できないストレス、「恵まれた環境」にいるのにそれを素直に感謝できない自分への呆れ、書ききれない程様々な感情が降ってきた2ヶ月だった。

人生の一つの節目を迎え学んだ事を書き残しておきたかったが、そんなこんなで今更パチパチうっているという次第だ。

この4年間、沢山勉強をした。その結果、学問的な知識やスキルは身に付いたが、今から話す事はある意味特別凄いことでもなんでもない。でもこの10つの事はタイムマシーンを使って4年前の自分に会えるなら是非伝えたい事かもれない。

①できなくて当たり前

1年目の秋学期の成績は自分的に最低だった。もともと英語は喋れたし、語学の面で苦労はあまりしなかったが、12年間同じ小中高で過ごした私は新しい学習環境に慣れるのに一苦労したのだろう。高校生の頃に取り組んでいたものとは比べられないくらい大学での授業は難しかった上、一つ一つの課題に100%の努力と時間を費やせない自分を腹立たしく思った。高校時代は自称「優等生」だったので、他のクラスメイトより発言できてなかった時や、試験の結果がクラスの平均点を下回った時は自分に自信がなくなった。

でも最初から「できる人」ってそうそういない。自分の理想を初めから達成していたら伸び代なんてないし、成長はそこで止まってしまう。むしろ、私は1学期目から成績優秀、「教授の質問ばんばん答えれます」系の学生だったら頑張る努力はしなかったと思うし、とてつもなく鼻持ちならない嫌な奴になっていた気がする。今になって私は自称「落ちこぼれ」でよかったと自信をもって言える。

②質問する君は勇者(かもしれない)

クラスの皆が既に理解してそうな事を聞くには勇気がいる。でもそれは自分は理解できていないけど、理解したい、学びたいと意思表明をする立派な行動だ。学生は本当に恵まれている。質問をすれば必ずそれに答えてくれる教授やメンターがいるし、どんなに変な質問でも馬鹿にする人はおそらくいない。(すくなくとも私のぶっ飛んだ質問にも教授達は丁寧に答えてくれた)わからない事を言語化すると、なぜわからないのかも見えてくる上、素朴な疑問から凄く面白いディズカッションに繋がる事は珍しくない。質問をする学生を教授群は好いてくれるし、親交を深めるきっかけにもなる。また「これ皆わかってるよな〜」という様な事も実は分かってない学生が多半な事もある。だからそこでその質問をする君はクラスの勇者的な存在になれるのかもしれない。

③ 小さな目標をみつけよう

大学生は卒業やその先に待っているキャリアや夢の為に毎日勉学に励む。でも4年間は短いようで長い。4年後、もしくはもっと先のゴールに向かって走り続けるのは大変な事だ。だから遠い先ばかりではなく、短い期間で達成できる目標を見つけてみよう。取り組みたい夏のインターンを見つける。オーケストラのソリストオーディションの為にバイオリンを頑張る。次のテストでは前より10点以上取る!週末ゆっくりしたいから木金は追い込んで課題を片付ける。大きな目標は4年、またはそれ以上の年月が経たないと達成感は味わえない。でも、それに向けて現実的な小さな目標を達成するたびに、やりがいや自信をつける事ができる。一つのゴールだけしかない長距離マラソンを走るとどうしても途中で気が遠くなってしまう。でもいくつかのポイントに小さなゴールを設けておくと、そこを通るたびにまた大きなゴールに近づいた喜び、そしてまた次のポイントに向けて頑張れる勇気が生まれてくるはずだ。

④課題をランキング付けしよう

リーディングにデーター分析、ワークシートに、研究報告、ペーパー提出、グループ発表。授業が終わるたびに教授達は次々課題を増やすのが大好きだ。出された課題や読書課題はじっくり100%の力や時間をかけてこなすと寝る時間はなくなる。一週間のうちにこなさなくてはいけない量の課題を並べると気が遠くなる。なので、成績が重要視される課題や今後の授業で必要になってくるであろう内容のリーディング等、重要な課題から先に取り組もう。初めのうちはどの課題が大事なのかはわからないかもしれないが、学期が進むにつれ教授がどの課題を重要視してるのかも見えてくる。そして余った時間で残りのリーディングに目を通そう。最悪、ペーパーのタイトル、段落のはじめと最後、結論の段落に目を通せば授業のディスカッションにはなんとなくついていける。(これのやりすぎ注意)

⑤見切りをつける

私は「頑張ったらできる」なんて言葉はあまり信頼しない。もちろん頑張って何か苦手な事を克服する事は素晴らしい事だ。でもなんでもかんでもただ「頑張れはできる」はデタラメだ。私はコンピューターサイエンスが苦手だ。一年生の時に出来れば便利だと思い、コンピューターサイエンスの授業を受けた。最初から苦手だったが、諦めず自分なりに努力した。でもその努力に見合う成績は貰えなかった。頑張っても成果が出ない時は出ないし、頑張り方が間違っているかもしれない。本当にその授業は必要なのか、他にも目的地に向かうルートがないかどうか見極める事も大事だ。ただ意地を張って取り組んでいるのなら、その努力に終止符を打つ事で自分の視野がもっと広がるかもしれない。

⑥他人じゃなくて昨日の自分と勝負しろ

「周りと比べても意味がない」というセリフはよく聞く。でも知らぬ間に他人と比べてしまうものだ。自分より「できる人」を見ると劣等感に陥るし、反対に自分より「できない人」を見るとホッとする気持ちになってしまう。だが、そもそもその「できる」「できない」は誰がきめているのか。名門大学に行って有名企業に就職したAさんは「できる」人なのか?成績が悪くてなかなか就職先がみつからないBさんは「できない人」なのか?

そもそも「できる人」も「できない人」も世の中に存在しないと思う。確かにAさんは世間一般から見れば勉強も仕事もできて優秀なのかもしれない。でもBさんはもしかするとAさんがもってない職人技だったり芸術性をもってるかもしれない。そうではなくてもまだBさんの才能や技術は開花してないのかもしれない。

才能も能力も人それぞれ違うものを持って生まれてきている。生まれ持ってなくとも、育った環境、今まで受けてきた教育の結果今もっている能力や才能、技術を持ち合わせた「自分」が形成されている。なので育った環境が違って、DNAの塩基配列が全く違う他人と自分を「できる」「できない」のカテゴリーで比べても時間の無駄でしかない。

でも人間はどんな形ででさえ何かと比較する事はやめられない。だったら自分自身と比較すればいい。今日の自分は昨日の自分より好きか?一年前の自分からどれくらい成長したのか?去年の目標は達成できなのか?成長や変化の基準は他の誰にも決めさせない。だって皆違うのだから成長のスピードも形も人それぞれだ。

世間一般からみた私はまだまだひよっこのガキなのかもしれない。でも私は4年前の自分より今の自分の方が好きだし、この4年間で大きく成長したと自信をもって言える。他人からすればその成長は明らかではないかもしれない。でも自分にとっては明らかだかだからそれでいいのだ。自分の成長は自分自身で認めてあげよう。

⑦GPAだけが自分の価値じゃない

GPA3.8以上ないとメディカルスクールに行くのは難しい。良い企業に入るには3.5はないと難しい。もはや3.0以下ならレジュメに書くな!とよく言われる。学期が終わってから成績が出るまでソワソワするもんだ。

学生は一学期の頑張りをABCDFのアルファベットや4.0が最高点の5段階で評価される。成績は大事だ。大学院入試や就職(アメリカの場合)に大きく影響してくる上、極端に悪かったら卒業が先延ばしになってしまう事もある。だから学生は成績を上げるため、良い成績をキープするために必死に勉強をする。

0.01でもGPAが上がると「自分イケテル」と思ってしまうし、逆に少しでも下がると自分の努力は価値のないものだったのかと酷く落ち込んでしまう。生化学の試験で対策は万全で取り掛かったつもりだったのに、試験を提出したあと自分がなっとくいくレベルで出来なかったと思い込み、大勢の学生が集まるロビーで号泣した事もある。(その際は周りにご心配、ご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした、、、、、)

でも正直成績の付け方なんて教授や授業によって変わってくるし、同じだけの時間や努力を費やしても全く違う成績が付く時は付く。その為にあまり興味はないが比較的簡単な授業でGPA稼ぎする学生も少なくない。しかし、Aを取ったからといってその授業で大きく成長したとは限らない。むしろBだったけどAを取った授業より多くのことを学んだと思った授業も沢山あった。

GPAは本当に大事だ。でも自分はGPA稼ぎをしに大学進学したはずではない。この大学で沢山の事を学びたいと思ったから来たはずだ。確かにGPAはある程度、自分のパフォーマンスを数値化してくれる。でもその数値やアルファベットはその裏にある努力や成長は物語りきれない。

大学院進学や就職をする際、GPAは重要視される。でもそれ以上にもその人の人格や他の才能、大学で何をしどう成長したのかも含めた全体的な評価をしてくれる。だからGPAに捕われすぎず好きな授業を取れば良いし、GPAを自分の価値だと思い込むのもやめた方がいい。自分は数値化できない魅力ももっているんだから。

⑧目標が変わるのは悪いことじゃない

大きくなったらお医者さんになりたい。バレリーナになりたい、音楽家になりたい、サービスカウンターのお姉さんになりたい。幼少期は「大きくなったら〇〇になりたい」と夢を抱くものだ。その夢を実際に大人になるまで追い続け、叶える人とても輝いてみえる。

しかし、10年経てば人は変わるように、周りの世の中もその人以上に変化している。小さな頃になりたかった職業はもうなくなり、新しい魅力的な仕事や業種がどんどんでてくる。なりたかった夢がなくならなかったとしても、その目標を達成する手段は時代と共に変化する。世の中が変化するんだからその人の夢が変わったっておかしくない。また以前は知らなかった分野を発見し、それを追求するのも素晴らしいことのはずだ。

大学で専攻する分野とはあまり関係ない仕事に就くことに4年前の私は大きな疑問を抱いていた。何故多額なお金を払い、沢山の時間をついやした事を仕事にしないのでろう。もったいなくないのか?私は絶対やるまい!と心の底では思っていた。しかし皮肉にも、私は専攻した生物学とは一見全く関係ない職種につこうとしている。生物学を嫌いになったわけでもないし、むしろ生物を専攻してよかったと思っている。この4年で私は以前より倍以上のアカデミアや業種を知ることができたし、生物を専攻することで経験した授業、インターン、研究、学会や様々な人との出会いの中で自分の窓が大きくなった。その中で自分は何が好きなのか、得意なのか、そして何が嫌いで苦手なのか、自分を知る機会を沢山頂いた。

目標作りは自分を知る事から始まる。その目標を達成するために様々な事を経験する。その体験の中でもっと自分の事を知っていくうちに目標が少しずつ変化する事。その過程を全部楽しめばいいと思う。

⑨とりあえず寝ろ

「ここわからないからもっと勉強しなきゃ」と試験前日の夜は必死に追い込みたくなる。自分が納得いくまで勉強したら絶対徹夜してしまう。わからない問題を三回解いても分からなかったらとりあえず寝ろ!と4年前の自分に言いたい。意地をはって、朝方まで勉強しても頭の回転率はさがる上、疲れとストレスがたまるだけだ。寝不足の朝、ボーとしていた私は滑って転び大事なコンサートの前に手首に怪我をしてしまった。怪我はしなくとも、徹夜をしたら次の3日間は身体がしんどくなるし、他の授業や活動にも影響がでてしまう。休むことも頑張る事以上に大切な事だ。

⑩自分の成功は自分だけの物じゃない

卒業証書は自分の努力だけでもらったものではない。今まで自分を育て、アメリカまでいかせてくれた両親。一緒に4年間励まし合ってきた大切な友人達。わかるまで諦めず説明してくれたり、落ち込んで泣きながらオフィスに駆け込んできた私の話を聞いてくれた教授達。優しく相談にのってくれる先輩や卒業生、学生が心地よく生活できるようお掃除してくれるおじさんおばさん、会う学生ひとりひとりに”good morning”と大きな笑顔で挨拶してくれる謎のおばさん。「元気か〜?」とやたらと甘いお菓子をもってきてくれるホストファミリー。スーパーで持ちきれないくらい買い物してオドオドしていたら、面識ないのに車に載せてくれた優しい老夫婦。

私はこんなにも充実した4年間を過ごせたのは、沢山の人達のお陰だ。今まで支えてくれた人たちに恩返しはしきれないが、今度は自が誰かの支えになれる存在になるよう、周りを大事にできる大人になりたい。

“Do things you like that might influence one other person”

ある教授の言葉がこの4年間で一番印象に残った。

この言葉を胸に、これからも楽しみながら頑張っていきたいと思う。

全然ブログ更新できなかったですが、4年間読んでくださりありがとうございました。これからも後輩達が面白い記事を書いてくれると思うので、私も一読者として楽しみにしています!

まゆ