いつも僕の日常生活や人生の分岐点的な話ばかりなので、今回はそこから少し離れて、トピックを日本の英語教育と具体的に絞って記事を書いてみました。
ここでは、よくある「日本の英語教育はインプットばかりでアウトプットが足りない」という議論は横に置いておきたいと思います。グリネルに来て英語で戸惑った経験から、高校時代に教わっておきたかったと思ったもの3つをリストアップしました。
- 実はただの挨拶系
Level1 – “How are you”対策
どの学校の英語の授業の初日はこのフレーズから始まるのではないでしょうか。これに対する回答が”I’m fine, thank you. And you?”しかない、のはよく議論される点なので、大学に来る前からこの問題への対策は僕はある程度できていました。”I’m tired”とか “I’m good”とか “I’m alright”とはいろいろバラエティのある回答を準備しました。
Level2 – “what’s up?”返し
日本から一歩も出たことない受験英語勉強中の高校生も聞いたことがあるんじゃないでしょうか。ちょっとイケてるアメリカ人は “how are you?”なんてご丁寧に聞いてこないで、 “what’s up?” と軽いノリで話しかけてくるらしいよ、と。これそもそも日本語に直訳ができないので、初めて”what’s up”とキャンパスで聞かれた時は、なんて返答すればいいのかわかりませんでした。だいたいわかってきたのが、特に大した答えを期待されているわけではないので、”just chilling(テキトーにぶらついでるだけっすょ)”的なことを言ってから、”what’s up”とか”you?”と華麗に返答できれば問題なしでしょう。
Level3 – 人生どう?
What’s upと言われた時は、返答に困ったものの驚きはしませんでした。一番驚いたのが、”How’s your life?” というフレーズ。日本の英語の試験で訳しなさい、という問題が出たら「あなたの人生はどうですか。」となるこのフレーズ。初めて聞かれた時は、ものすごい考え込んでしまいました。「僕の人生か、何の話から始めたらいいだろうか。とりあえずまだ将来のビジョンが明確じゃないから、専攻が決まらなくて困っているんだ、という話からするか。」などガチで人生の話をしてたんですね。”How’s your life?”というのも”how are you?”(よーっす調子どぅ?)くらいのノリでテキトーに話しかけてきてるだけなので、”nothing much”(特になんもねぇよぉー)とか言ってスマートに交わすというのが攻略法の一つです。
こんなん学校で習わなかったし。日本の英語の先生、SVOとか難しい英文構造の話をする前に、こういう日常サバイバルに必須な英語教えてください!
- ダンスしてんのか?ボディランゲージ編
「英語教育」を考えた時にどうしても英語という言語そのもの(語彙と文法の組み合わせから成り立っているもの)に目がいってしまうと思います。でも、実はボディランゲージってめちゃめちゃ大事だよねという話です。実はこれは実際に細かく人間を観察して比較して、明確な結論に至ったわけではないので、具体的な例が挙げきれないのですが、英語ネイティブ話者はボディランゲージの使い方が特徴的なのではないかと思います。例えば、英語だと例を出すときは基本的に3つ出すと文章がバランス良く組み立てられる、ということから、例を一つ挙げるごとに指を折り曲げていくとか、日本語でのコミュニケーションにはあまりないボディランゲージがたくさん含まれている気がします。帰国子女の子たちの英語がとてもネイティブっぽさプンプンなのはこういう文化的な知識(本人たちは無意識かとは思いますが)が自然と身についているから、かもしれません。僕の会話英語を聞いて「アメリカで育ったんでしょ?」と言ってくる人たちがいるのですが、こういう人たちの一人に言われたことがあるのが「アメリカで育ったのかと思ったけど、笑い方が日本人だよね」と。確かに、具体的な描写はできないのですが、僕の笑い方は日本語母国語者のもの、だと言われてから認識するようになってきた気もします。最近ではアメリカ人を観察して、どうやって笑っているのか研究・分析するのもハマっています。日本人の英語力をあげたいと頑張っている日本の大人たち、読書聞話の4技能を伸ばすのもいいけど、動(ボディランゲージ)のスキルをきちんと身につけさせることも考えたら良いかも。
- 人種*言葉 – 白人英語
ちょっと社会学的な、真面目な項目に移ります。大学に来てから英語に関して困っていた(いる)ことに一つに「アクセント」があります。社会学的にまずズバッと言って仕舞えば、そもそも標準語という「普通」の基準を設けて他の話し方をアクセントとか方言とか言って、マイナー化するのは社会的抑制につながるので社会正義にかなっていません。それを周知で、わかりやすいようにあえてアクセントという言葉を使います。
いわゆるインド英語、とか黒人英語(thがdに聞こえるだとか?)という英語の中にも違う種類があります。僕の受けてきた日本の英語教育ではこれらに触れる機会が全くありませんでした。教科書に黒人のキャラクターは出てくるけども、録音されたリスニング用の音声はいわゆる「標準化」された英語。学校の定期試験はもちろんの事、センター試験でも、英検でも、TOEFLでも、インド英語、黒人英語といったジャンルのリスニングを経験したことがありません。たまにイギリス英語、オーストラリア英語といういわゆる白人英語のアクセントの種類はあっても、有色人種のアクセントを教わる機会、は意図的に避けられてきたように思います。
こうすると、非英語話者が必死に勉強して英語力を獲得しても、白人の言っていることは理解できるけれども、黒人の言っていることは聞き取りにくい、ということが当たり前のように起こってきます。そうすると白人の思想は世界中に広まっていくけれども、非白人の思想や言葉は人に響かず、一向に広まっていかない、ということも考えられます。こういう日本の教育の側面にも、白人至上主義からくる人種差別を垣間見ることができるのです。こういう意味で、非白人英語と言われる英語の音に慣れる練習の機会をもっと提供するべきではないでしょうか。
今回はいつもとトーンを変えて、日本の英語教育に対して幾つかの提言、批判をしました。アメリカの大学に来てから三年目、日常レベルでの問題はほとんどなくなった今も、僕の英語学習は途絶えることなく続いています。皆さんは英語を通して、何を学び、何を感じるでしょうか。