グリネル生の夏休み・タンザニア編

Kwame

グリネルは5月の末から8月の末まで夏休みで、気が付けばもう3分の2が終了するころである。グリネル1年目を修了した今年の夏休み、6月いっぱい1か月は米国のNPOの行うサマースクールプログラムでタンザニアに行ってきた。先学期まるまる使って願書や書類手続き、予防注射などをしなければならず大変だったが、グリネル1学期分の一つの授業に当たる単位も今回のプログラムでもらえた。内容としては、プログラム団体の所有する現地の駐屯地に基本滞在し、タンザニアの豊かな自然資源を利用し環境・生態系のマネジメントや、地域型持続可能発展のアプローチ、国家レベルでの環境保護政策について学んだ。

基本的にアカデミックは、専門が違う現地の3人の教授のレクチャーを受け、それに関連した内容でフィールドワークに出かけることの繰り返しだった。それぞれのアクティビティが生物学的なアプローチだったり、政治にかかわるポリシーについてだったりと、多様な側面から環境保護について学べた。また、現地家庭でのホームステイ、地元部族の文化についての部族の長老によるレクチャーや近隣地域での奉仕活動など勉強以外の活動も多くあり非常に満足した。

タンザニアの社会は、観光が主要産業だからか、極度に貧しいわけではなく急成長しているわけでもなく非常に穏やかな印象であった。しかしマジ、マジ(スワヒリ語で水を意味する)と言って駆け寄ってくる子供たちがいたりして先進国に住む自分のプリビレッジを強く認識させられた。タンザニアの優れた環境保護政策も結局、旧宗主国が作り、欧米NGOや政府によって保たれてきたもので、国立公園などに行けば、自然も結局プリビレッジのある外国人のために存在するのだと実感できる。日本のプレゼンスは、インフラなどの国際援助やランドクルーザーなどの日本車をはじめ、意外にも大きかった。特にこういった細かいところは、わざわざ現地に来ないとわからないと思う。

共に参加した30人ほどの米国人の学生は、クセのある生徒も多く反面教師的に色々と学んだ。グリネルの米国人はどんな人でも割とどこか真似したいような尊敬する部分があるのだが、それがない学生がこのプログラムには多かったように感じた。最も感銘を受けた学生は、イェール大学の一人の女の子で、将来米国大統領になるのではないか、というような人間性と気品があった。夜の暇なときに白人、社会主義、構造的暴力、菜食主義などについてよく二人で議論をした。ハーバードの学生も一人おり、どんな人かと少し期待していたが、ハーバードは人間でも入れるんだ、と知る結果に終わった。

自分自身の成長については、ヨーロッパ系の米国人とタンザニアの現地人しかいない環境で素の自分で人々に接し通用しことが、自分の今の生き方の自信になったと思う。欧米的思考環境の中に自分が合わさずとも、オリジナリティを保ちつつ周りに馴染み、対等に様々な議論ができ、友人もできた。また、政治科学専攻として、環境問題でも政治が大きな役割を占めることがわかり、自分の将来にも自信が持てたと思う。

自分の将来についてはまだ構想中だが、今回のような経験を通して、もがきながらも少しずつ形が作れてきたのではないかと思う。少なくともタンザニアでの生活は自分の人生観に大きな影響を与え、タンザニア生活以降、金銭的豊かさ、社会的地位、名誉への執着が完全に消えた。

そういったものは豊かな人生を歩むこととは無関係であると、学んだ。

Kwame

コメント

  1. 板橋区の読者 より:

    非常にユニークな体験についての記事、楽しく拝読しました。
    「金銭的豊かさ、社会的地位、名誉への執着」が薄れたと書かれていますが、そもそもそれらを良きものとして刷り込んでくるメディアや周りの人たちと今後どのように付き合っていこうと思いますか?

    • Kwame より:

      板橋区の読者様

      コメント、どうもありがとうございます。

      確かにそうした隔たりは、友人、家族と話していてもよく感じます。

      近頃流行ったアドラー心理学に有名な考え方ですが、自分が考えるべきは自分自身の課題、他人の意見まで自分は支配できないと思い、やり過ごしております。逆に言えば、他人の生き方に自分の人生哲学が支配されることもないと考えています。

      しかしながら現実として、貪欲でキャリア志向な社会に晒されるうちに、徐々に彼らの思考に染まってしまうのではないかという不安はあります。また、将来的には、自己の内面で、こうした人生における発見を完結させるのではなく、グリネルの教育を生かし、社会で善とされている不正義を改善するための行動にまでつなげたいと考えています。

      私自身も、日本社会で当たり前に捉えていた事物を、タンザニアでの直接的な体験を通してようやく批判的に考えられるようになったので、メディアや周りの人々が
      「金銭的豊かさ、社会的地位、名誉への執着」を持つことはしょうがないとも思います。

      少し切り口は異なりますが、グリネル生の夏休み・インターンシップ編にも、似た考察が書かれておりますので、ご一読いただければ幸いです。

      Kwame