2016年を真面目に振り返る

今年最後の投稿では、大学の内と外で起きた出来事を見つめて、2016年を総括しようと思います。個人的にも社会的にも、今年は「アイデンティティー」が重要なテーマだったように感じます。

先学期は就職活動も本格的に始まり、自分の能力や興味を仕事に照らして考える機会が増えました。リベラルアーツ教育のもとで様々な学問や価値観に触れてきた反面、たった1つの職業を選び取る難しさを実感しました。また、付き合っていた(と思っていた?)女の子と別れてしまい、自分が彼女や友達に求めるものについて悩んだりもしました。頭でっかちめ、と思った玄人の皆さんは笑って読み進めてください。

image_1460981788_28

自分って、国家って何なのよ?

授業の中では、Political Sociology of Citizenship(市民権にまつわる政治的社会学)と、Deutsche Identität zwischen Krieg und Versöhnung(戦争と贖罪の狭間にみるドイツの同一性)という2つのゼミが印象的でした。前者では、国際化に伴う市民権や国家が果たす役割の変化について議論しました。「〇〇人であること」とは、言語や文化のみならず、特定の義務や権利、他国との地理的、歴史的な境界などを共有することだ、といった内容です。後者では、分断と統合を繰り返し、高尚な文化を生み出す傍ら、虐殺や戦争を許したドイツのイデオロギーを分析しました。小説や詩歌、映画を鑑賞して、負の歴史との向き合い方や民主主義の定義などに迫りました。

6shh_xjke8puyo_uztupmivjzbjmjkjdbnysugwvsi

9人しかいないドイツ語のゼミ。『帰ってきたヒトラー』の表紙に眼鏡をかけてみる。

なぜこれらの授業の内容に触れたかというと、今日的な欧米の問題と関連性があるからです。ユーロ危機、難民危機とテロリズムを受け、EUのアイデンティティーも改めて問われています。特に、6月のイギリスのEU離脱は、国際化に後れを取り困窮した中間層の不満や、難民やテロを思想的・経済的脅威に感じて発露した「自国のことはEUではなく自国が決めねば」という主権意識を可視化したように思えます。

また、アメリカのアイデンティティーも大きな変化を見せました。11月の大統領選挙を通じて、こちらも抑圧されてきた排外主義やポピュリズムが露呈しました。一方で、7月に日本で起きた障がい者施設殺傷事件も、似たような優性思想を反映しているのかもしれません。

20banburysub-blog225-v2

ニューヨークタイムズの「今年のイラスト」に選ばれた、ブラックホールみたいなUNのロゴ。アート。

文化面に目を向けると、上半期では「ポケモンGO」が世界的にヒットし、社会現象を巻き起こしました。下半期では、「恋ダンス」や「ピコ太郎」が流行ったようです。どれも真似してSNSに投稿できるものばかりだな、と人々の自己顕示欲にウンザリしていたのですが、グリネルの文化祭で披露するかもという話が出て、現在クリスマスを返上して猛練習です。実際にテレビで観たり、踊ってみたりすると意外と面白いものです。“百聞は一見に如かず”ということでしょうか。海外留学も、そんなものなのかもしれません。強引な結びですが、皆さん良いお年を。来年も「ぐりねりす」をよろしくお願いします。